第26章 約束
修も一つずつ応えようとした時だ。加賀を取り巻いていたインタビュアーたちが一気にざわついた。
「本当ですか?!」
「はい、俺は今季限りでここを引退します。」
そう加賀が明言していた。
「…でも!一緒に最後走られた方は!」
「それは彼女次第と言いたいところですけれど…連れていきます。」
「連れてって!お相手は別チームですよね!」
「了承はいただいておりますので。それよりも彼女のことに関してはこれ以上深堀しないでくれませんか?」
そう加賀はきっぱりと言い切った。その伝言を受けた修側の質問には変化がみられる。
今日子側への質問も少しずつ増えていった。
しかし、両チームとも『知っている』・『今回の質問はレースの事で…』を貫いた。
「…大変なことになってる…」
「まぁ、今季の王者が別チームの女連れて走ったらこうなるでしょ」
「だから言ったのに…」
「まぁ、今となっては加賀の事は止められないだろうけど…」
そうアンリと話をして居た雅の元に一人の記者が絡んでくる。
「…君、今日ブリード加賀君の最後に車に乗っていた子だよねぇ」
「…え?」
「付き合ってるのかい?それとも情報交換?スパイ的に仕組まれた関係、とか?だとしたらどっちから?裏切りにもとれるよねぇ…」
にやにやとした記者にアンリはかなりイラついていた。
「あのさ、あんた何が言いたいわけ?」
「これはこれは、1回だけのおこぼれチャンピオン、だったな。確か。」
「…は?」
アンリの不機嫌に輪をかけてくる記者。しかしそれだけではなかった。そう、その一言で雅の機嫌までもが悪くなったのだ。
「…今、なんて言いました?」
「ん?聞こえなかったか?お情けで勝たせてもらった、ありゃ確か13回の時だったか?14回だったか?ま、そのくらいにか記憶に残らねぇってこ…ッッ」
そう続ける記者に雅は思い切りコップに入っているウーロン茶を投げかけた。