第26章 約束
「ねぇ…!城君…!」
「んぁ?」
「きっと…大変なことになってると思う…」
「初めてサイバーのマシン乗ったはずだろ、余裕だな…」
「余裕はない!ずっと緊張してる…」
「そうか?」
「…私より…城君のがよっぽど余裕…」
「…ッッ…どこがだよ」
視線こそ寄こさないものの加賀はゆっくりと話し出す。
「ぎりぎりで勝てて、しかもあの時雅の声しなかったら負け逃げだろ、今頃…」
「でも、勝ったじゃない」
「そりゃ雅が大丈夫だって言ってくれたからだろ」
「…ッ」
「それに、好きな女、待たせてんのに2位でゴールとか…だせぇだろ…」
そう続けながらも凰呀に視線を向けた。
「な、凰呀」
それについて凰呀からの返答はなかったものの、カシャン…っと少しだけ認識するカメラが動いた。
「…凰呀…って、優しい子なんだね」
「ぁあ?」
「だって、城君の事しっかり解ってるみたい」
「じゃじゃ馬だろ、こいつ。」
「そういう事言わないの」
くすくす笑いながらもウイニングランも終えた加賀はAOIのピットに戻ってくる。下ろしてもらえば雅も凰呀をそっと撫でた。
「乗せてくれてありがとうね」
そう呟いた時だ。凰呀もゆっくりと一度だけ動いた。
「…珍しいこともあるもんだ」
「本当に…あの凰呀が反応した…」
グレイとフィルも少し驚いていたものの嬉しそうに笑っていたのだった。シャンパンファイトも終わり、インタビューが始まった。やはり注目されたのは当然ながらグランプリのトップ三名、しかし、同時に修の所にもインタビュアーが集まってくる。
『最後のランですが、オーナーさんはご存じだったんですか?!』
『チームを超えてのお付き合いなんですか?!』
『いつからなんでしょうか!?』
『女性の方は来期にはスゴウからAOIへの移籍でしょうか?!』
等など、加賀が連れて出ればこうなることは解っていた事とはいえ、本来のヒーローインタビューとはかけ離れて居た。