第21章 狂おしいほどの夜
『今日、そっちに1泊だけ部屋とったから行く。またついたら連絡する』
そう言ってきたのだった。
『城君、AOIもホテル取ってるでしょ?』
返事を入れるもののすぐに既読が付いたものの、返信がこない。その代わりに…と言わんばかりに着信が入ってきた。
「も、しもし?!」
『お、早いな』
「だって…そりゃ…って、そうじゃなくて…」
『さっき言った通りだ。宿取ってないとそっちに泊まれねぇだろ』
「…泊まる?」
『あぁ。それに部屋の中にいるかいないか、別の人がいるかどうかもチェックなんざねぇだろ』
「そうかもしれないけど…」
『約束、忘れたとは言わせねぇよ?』
そういう加賀の声はどことなく低く、そして甘く聞こえてきた。
「…ッッ…約束って…」
『忘れた?』
「…それは覚えてるけど…城君のが…覚えてないかと思った…」
『クス…ひでぇなぁ…』
おどけてみる様に加賀は電話口で笑っていた。
『…雅?』
「…あんまり…やだ、そういうの…」
『…雅…』
「すぐ…会いたくなる…会って…抱きしめてほしくなる…だか『雅』…ッッ」
珍しくも加賀が雅の言葉を遮った。
『…俺の方だよ…その言葉は…』
「城君…?」
『ただでさえ顔見えない中でよ…すぐ会いたくなるって…出来る事ならすぐにでも行きたいさ。…でもミーティング終わってから向かうからよ…少しだけ待っててくんねぇかな…』
「…ん…」
そう話した加賀。もう切ろうかという時だ。
「…城君…」
『ん?』
「なんでも、ない」
『何だよ』
「……会ったら言う…」
『わかった』
そうして二人の通話は切れたのだった。