第20章 今日子の想い
「はい…知っています。加賀さん本人から聞いております。」
「…それであなたはどうするつもり?」
「私は…」
そう言いかけて加賀の方をちらりと見る。表情を変えることも無いままに雅の言葉を待っていた。
「…私はスゴウチームを去ることも、検討の範囲内にあると菅生オーナーに伝えております。」
「…ッッ」
「それはスゴウを捨てると言う事で間違いないのでしょうか?」
「お言葉ではありますが…捨てるのではないんです。」
机の下できゅっと手を握りしめる雅はまっすぐに今日子の目を見つめた。
「一時はオーナー代理も務めていたあすかさん、それに中心となっているクレアさん、私が付かせていただいているドライバーのアンリ・クレイトー…全員に話をしました。皆、了承してくれています。」
その話は加賀も初耳だった。目を丸くして雅に何かを言いたげな表情を浮かべているものの、深呼吸をする雅に修は言葉を重ねてくる。
「…どうやらこれはそちらのお相手である加賀君も知らなかった事かもしれないが…それでもこちら側とすれば先に聞いております。この本人の意思も含めて…」
「…わかったわ…」
「それで…そちらのオーナー様のお考えをぜひ…」
「・・・お返事させていただく前に、ひとつだけ真坂さんに、お伺いしてもいいかしら…?」
「はい」
「加賀君を選んで、後悔はしてないかしら?」
ドクン…っと胸が跳ねた。どういう意図で聞いているんだろう…これで答えをミスったら…?一瞬にして雅の頭の中で様々な感情が渦巻いた。
「私は後悔はしていません。その後悔というのがどういう意味でつかわれているのかは…わからないところもありますが、加賀さんがいてくれて…好きになって…、思いに答えてくれて…だから私は笑っていられるんです。こうして付き合う前は嫌いになれたら…とかマイナスな事もたくさん考えました。でも…そんな時でも後悔は一切してないです」
自然と言葉がするすると紡がれていくことに雅自身も驚いた。