第20章 今日子の想い
「分かったわ、」
そう一言今日子が小さく応えた。
「…私の方も、問題はないと思います。ただ、成績が下がったらデートの回数は減らしてもらうわよ?いいわね?加賀君」
「…はいよ」
そうしてお開きになる。部屋を出る前に修は加賀を呼び止めた。
「加賀君」
「はい?」
「…ハヤトの時といい、今回はこういう形となったが…」
話し出す修の言葉をじっと聞いていた加賀。
「君だから、というのも正直あったんだと思う。うちのクルーをよろしく」
「よろしくって言われても移籍どうのって話じゃないんで…でも…ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げてふと視線を雅に移す。
「…」
フッと口角を上げて一気に雰囲気が柔らかくなる。それを見て修もまた軽く会釈をした。ホテルの入り口まで二人を見送りふと息をついた時、雅に修は聞いていた。
「加賀君に言ってなかったのか?」
「何をでしょうか?」
「クス…スゴウをやめる決意があるって事。」
「それは…はい…」
「そういう所言っておいたらいいだろう」
「でも…確かに葵さんから聞いたことは加賀さんにも聞いてるんですけど…でも…インディーズに連れていく気はないって言われたらなって思って…」
「連れていく、か。」
「はい…そうなるとちょっと私自身の気持ちが重たいかなって思って…」
ふふっと笑っている雅に修はつづけた。
「…重たいとは感じてないと思うけどな」
「へ?」
「好きでたまらないって顔、見ただろう?」
「そう、でしょうか…いつもあんな顔してくれるので…」
「クス」
『思った以上に重症だな』と、言葉にすらせずとも雅の横顔を見ていた。