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【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──

第5章 「2025誕生日記念短編 魔女は蒼に恋を包む」


チャイムが鳴った瞬間、教科書をまとめながら席を立つ。
教室を出ようとしたとき、後ろから野薔薇ちゃんの声が聞こえた。



「あ、。この後、図書室行かない?」

「あっ、ごめんね! 今日はちょっと、用事が……!」



早口になってしまったのが、自分でもわかる。
でも、今は説明してる余裕なんてない。



「また明日でもいい?」

「あんたが珍しく急いでるって、何事?」



野薔薇ちゃんが笑いながら首を傾げたけど、それ以上は追ってこなかった。


(ごめんね、野薔薇ちゃん)


教室を飛び出し、寮棟までの通路を早足で歩いた。
冬の冷たい廊下の空気が、落ち着きのなかった頭を冷ましていく。


(必要な材料は、冷蔵庫にもう準備してあるし)

(レシピ通りにやれば大丈夫……焦らなければ……!)


寮の共有キッチンにたどり着いたときには、額にじんわり汗が滲んでいた。
扉を開けると、誰もつかっていないようだった。


(……よかった。貸切……!)


エプロンを身につけて、キッチン台の上に材料を並べる。
泡立て器、ボウル、粉ふるい――すべて準備万端。


(まずはスポンジから……)


卵を割って、溶かしたバターを加える。
泡立て器の音が、静かなキッチンに機械的に響く。


スマホに目をやると、すでに16時半を過ぎていた。


(なんとか、間に合いそうかな……)


けど、単純作業をしていると、
ついつい朝に見たあの光景が頭をよぎってしまう。


(全部、高そうなものばっかだったな……)

(そうだよね、だって……先生だもん)

(あの“五条悟”だよ)


それに比べて、私が先生のために用意したのはボールペンと手作りのケーキ。


(……無理してでも、ブランド物買えば良かったかな)

(でも、もう買い直す時間もないし……)




「……はぁ」



思わず、大きなため息が漏れる。


粉をふるいにかけようとしたタイミングで、スマホが震えた。
慌てて画面を見ると、“先生”からの通知が。



『19時に僕の社宅の部屋おいで。待ってるね』


“待ってるね”


その言葉で、さっきまでの不安が少しだけ和らいでいく。


(……先生……)

(うん。ちゃんと渡そう。ケーキも、プレゼントも……)

(見劣りしても……先生を祝いたいって思う気持ちは一緒だもん)
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