【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第5章 「2025誕生日記念短編 魔女は蒼に恋を包む」
♢ おまけ ♢
高専の執務室。
今日も書類の山と格闘していた伊地知の元へ、五条がのんびりと現れた。
「あ、五条さん。ちょうどいいところに。これ、サインお願いします」
伊地知がいつものようにペンを差し出そうとしたその瞬間、
五条はすっと手を上げて、それを制した。
「もう伊地知のペンいらないから。ほら」
そう言って、ポケットから取り出したのは、
透けるような青の軸に銀のリングが光る、一本のボールペンだった。
「素敵なペンですね。買ったんですか?」
思わずそう尋ねると、五条はふふんと得意げに笑った。
「いいでしょ、これ。名前入り」
ペンの側面には、小さく刻まれた “Satoru Gojo” の文字。
くるくると指で回しながら、それを見せつけるように言う。
「僕の彼女が、誕生日にくれたんだよね~」
五条は上機嫌のまま、書類にサインを走らせた。
「今まで貸した私のペンは返却してくださると期待しても?」
「伊地知、細かい男はモテないよ」
伊地知は苦笑しながらも、そっと胸ポケットに自分のペンを戻した。
だが、それからというもの――
「伊地知、書類まだ?」
「今日お渡しした分、もう終わったんですか?」
「僕を誰だと思ってるの? じゃあ、明日の分ちょーだいよ」
新しいペンを気に入りすぎた五条が、やたらとサインしたがるようになり、
結果、伊地知の仕事は以前より一層ペースアップを要求される羽目に。
(……これはこれで、仕事が増えた気が……)
それでも本来なら、急かさないと事務仕事など絶対にやらない五条が、“自分から進んで仕事をしている”だけ、まだマシというべきなのかもしれない。
伊地知はそう自分に言い聞かせながら、次の書類を差し出した。
すると五条が、待ってましたと言わんばかりに身を乗り出す。
五条の横顔は、わずかに緩んでいた。
本人はまったく気づいていない“幸せ顔”だ。
(……嬉しいんですが……そのペンを気に入ってるのもわかるんですが……!! 加減っていうものを覚えてください、五条さん……)
心の中でそっと天を仰ぎつつも、伊地知は業務を続行した。
その横で、青いペンを踊らせながら――
五条悟は今日もご機嫌でサインをし続けているのだった。