【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第5章 「2025誕生日記念短編 魔女は蒼に恋を包む」
さっきまで少しだけ誇らしかった“先生のプレゼント”が、一気に縮んで見える。
彼女としての自分が、なんだか恥ずかしくなった。
野薔薇ちゃんが、ふとこちらを見て首を傾げた。
「なに、。どうしたの?」
「えっ……いや、なんでもないよ。さすが先生だなって思って」
野薔薇ちゃんに声をかけられて、慌ててごまかす。
顔に出てたかな? それにしても、すごすぎるよ。
住む世界も、レベルも違う。
虎杖くんがプレゼントの山を見渡しながら言った。
「マジでひとつぐらい持ってっても、バレないんじゃん?」
「こらこら、物騒なこと言わないでください」
伊地知さんが眉を下げて苦笑する。
「冗談冗談!」
そんな二人のやりとりが遠くに聞こえる。
(……どうしよ、わたしのプレゼント……しょぼすぎる)
(いっそ、あげない方がいいのかも)
そんなこと、思いたくないのに。
頭の中は勝手にマイナスな方へ転がっていく。
「あ、みなさん、そろそろ授業ですよね。あとは、一人で大丈夫ですので」
伊地知さんの言葉に、みんなが一斉に立ち上がる。
「お、やべ! もうこんな時間!」
「伊地知さん、頑張って〜」
「……放課後、また手伝いに来ます」
談話室を出ていくみんなの背中に続いて、私も部屋を出た。
カバンの重さが、さっきまでの自信を押し潰すみたいに肩にのしかかる。
(ブランド物に、高級お菓子に、豪華な花束……)
あのプレゼントを見てしまったら、自分の“頑張り”だけが場違いに思えてくる。
“先生と自分”との距離。
立場の違いを、突きつけられた気がした。
廊下に出た瞬間、視界がじんわりと滲んだ。
泣きたくないのに。
みんなにバレたくなくて、唇を強く噛む。
教室までの足取りはさっきとは違って、すごく重く感じた。