【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第4章 「咲きて散る、時の花 後編**」
「……でも、それで先生が私のことを好きになる未来は変わるんですか?」
「五条さんが今私を好きになろうと、十一年後に好きになろうと……結局、未来は同じになるんじゃ……」
「お、確かに」
隣で五条さんが、ぽんっと手を打って言った。
「じゃあ、“結果”は同じだし、変わってないじゃん」
「ぶっぶー、不正解!」
先生がクイズ番組の司会者みたいに指で✕印を作っていた。
「なんか、自分なのに腹が立つのは何でだ……」
五条さんが眉をひそめてぼやくと、先生は片手を腰に当て、片方の口角を上げた。
「そこがさ、人間と物じゃ違うとこなんだよ」
「人の心は、“いつそう思ったか”で未来ごと変わるの」
「物体ならさ、そこにあるかないかは“結果”でしかない」
先生は呪力でクレープの包み紙を丸めながら、軽い調子で続けた。
「たとえばさ――」
「“ヤバい、トイレ行きたい”って思うタイミングが、電車に乗る前か、乗ってからかで運命って変わんない?」
「……え?」
「ほら、前だったら助かるじゃん。乗ってからだったら……もう地獄でしょ?」
五条さんが、思わず目を見開いた。
「その例え、天才すぎ」
先生は得意げに胸を張って、指を鳴らした。
「つまりね、“好き”って感情は同じでも――」
「“好きになるタイミング”は、めちゃくちゃ重要なんだよ」
それから、少しおどけた口調で言った。
「、何でかって聞いて」
唐突すぎて一瞬戸惑いながらも、私は言われるままに口を開いた。
「……何でですか?」
先生は待ってましたとばかりに、やや大げさな口調で言った。