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【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──

第3章 「咲きて散る、時の花 前編」


(……これが、の“力”)

 
呪いを祓うんじゃない。
痛みに悲しみ、呪いにまでも寄り添い、手を差し伸べる――
呆れるほどに優しい力だった。


その時、膨れ上がっていた時屍獣の肉体が崩れはじめた。

 

「五条さんっ!」

 

が振り向き、俺に向かって叫んだ。
その声が届いたと同時に、時屍獣の肉体が再生してないことに気づいた。


(こいつ……呪力が尽きて、術式でもう体を維持できてない)

 
の魔導が時屍獣の呪力の源――
喰らってきた“後悔の魂”を昇華したことで、こいつの術式そのものを根こそぎ潰したんだ。


(まさか、最初からそれを狙って?)


思わず笑いが漏れた。


出会って、まだほんの数時間。
弱くて、間抜けで、どこまでも危なっかしい。
でも、誰かの悲しみに寄り添って、手を伸ばせる優しさがあって……
その手を離さない強さもあった。


そんな姿が、悔しいくらい眩しくて。
気づけば、目が離せなくなっていた。 



「言われなくても、わかってるって」



右手に呪力を集める。
狙うは、崩れていく時屍獣の中心。



「術式順転――蒼ッ!」



砲弾のような衝撃が、時屍獣の腹を抉った。
肉も骨も内側から吹き飛び、黒い塊は音もなく崩れ、泥と化す。


再生の止まった“首”だけが、地面をずるりと転がる。
歯車の眼が、ぎり、と音を立て、を睨み上げた。



『コ……小娘が……』


 
唸るような、ねじれた声。
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