【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第3章 「咲きて散る、時の花 前編」
はゆっくりと膝を折り、その“瞳”を見下ろす。
「……あなたは、送らない」
静かに言い放つ。
その声音には、怒りも慈悲もなかった。
「私を甘く見たことを悔いて……ここで終わるの」
その言葉が落ちた瞬間、時屍獣の顔に細い亀裂が走る。
そして、音もなく崩れ、泥の中へと沈んでいった。
は泥に沈むその最期を、まっすぐに見届けていた。
「……」
俺は名前を呼んだ。
その名に、が反応する。
ゆっくりと顔を向け、俺を見た。
ほっとしたような、そんな表情だった。
そして、立ち上がろうと、膝を浮かせた――その瞬間。
「――っ……」
の身体がぐらりと傾いた。
「おいっ!」
咄嗟に駆け寄る。
崩れ落ちる身体を、そのまま抱きとめた。
その小さな身体は、既に意識を手放していた。
そのとき、俺はようやく気づいた。
まだ名前も知らない気持ちが気づけばずっと、胸のどこかに息をしてたことに。
抱きとめた身体があまりに軽くて。
その体温が温かくて。
何がどうとか、そんなのどうでもよくなってて。
ただ、もう少しだけ――
この腕の中でを抱きしめていたいと思った。