【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第3章 「咲きて散る、時の花 前編」
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あったかい……
ゆっくりと意識が浮かび上がる。
どこか柔らかくて、どこか安心する……そんな匂いに包まれていた。
頭を撫でられている感覚がある。
大きくて、少しだけ荒っぽい、でも優しい手のひらが髪をそっと梳くように動いていた。
(先生……?)
目を開けるのが、もったいない気がした。
でも、そっと瞼を持ち上げる。
ぼやける視界の中に、白い髪があった。
まぶたのすぐ近くにあるその髪が、微かに揺れて――
その奥には、青があった。
(やっぱり、先生だ)
言葉に出したくて、唇が少しだけ動く。
「……せん、せ……」
かすれた声が漏れたその瞬間――
「あ?」
不意に、真上から苛立ちが滲んだ声が降ってきた。
(……え?)
視界に飛び込んできたのは、明らかに近すぎる距離で覗き込んでいる――五条さん。
思考が追いつかないまま、目をぱちぱちと瞬かせる。
状況がわからない。
けど、とにかく顔が近い。
それに、この体勢……
(な、なにこれ……膝……枕……!?)
顔が一気に熱くなる。
跳ね起きようとして、でも頭がふらついて、肩をつかまれた。
「もう少し寝てろって。また倒れるぞ」
呆れたような声。
でもその手は、ちゃんと優しく支えてくれていた。
「すみません……」
申し訳なさそうに呟いたその声は、自分でも驚くほどか細かった。
すると、頭の上からふっとため息が降ってきた。
「ほんとは、高専に戻って硝子に診せようかと思ったんだけど」
思わず顔を上げると、五条さんはわずかに眉をひそめて、視線をずらした。
「でも、意識ないやつ引きずって移動すんのも……どうかと思ったから」
「だから仕方なく、こうして公園のベンチで休ませてたってわけ」
ぶっきらぼうにそう言ったが、その手はまだ私の頭から離れなかった。
「あ、ありがとうございます」
頬がじんわり熱くなるのを感じながら、そっと視線を落とした。
「あいつが何百年と喰った後悔を、あの一瞬で全部送ったんだ」
不意に、五条さんがぽつりと呟いた。
「そりゃ、ぶっ倒れるわ。……一気に力、使いすぎ」
そう言って、五条さんはふっと息を吐くと、
次の瞬間――