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【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──

第3章 「咲きて散る、時の花 前編」



「このバカ」



ぴしっ、と軽い衝撃が額に走った。



「いたっ……!」



思わず、額を押さえる。
見れば、五条さんが人差し指を立てていて、
どうやら……デコピンされたらしい。



「ちょっと……何するんですか……」



文句を言いかけると、五条さんが口を開いた。

 

「お前、わざと時屍獣に取り込まれただろ」



その声は、いつになく低くて真剣だった。

 

「はい。その方が多くの魂に近づけると思って……」



思わず口から漏れた言葉に、五条さんの手がぴたりと止まる。



「あいつにお前が取り込まれた時、俺は――」



言いかけた言葉が、唐突に途切れる。
五条さんは眉間にしわを寄せ、何かを言い淀んだあと、
ごまかすように、また前髪をぐしゃぐしゃと撫でてきた。



「俺一人でも祓えたっつーの」



そう言った五条さんの声は、いつもの軽さを装っていた。



「……ま、でも」

「お前がいたから、被害も少なく済んだんじゃねーの」


(……え?)


思わず顔を上げる。
五条さんの頬がほんの少しだけ赤くなっていた。


(……あ……照れてる)


何かを振り払うように、五条さんは息を吐き出す。
そして、今度は真っ直ぐにわたしの方を見た。



「いてもいなくても同じ、なんて――」



言葉が途切れる。



「あれは、悪かった……ごめん」



目をそらさずに、そう言った。
その一言は、とても静かで。


(五条さんが、謝ってる……)


信じられないものを見たみたいで、言葉が出てこなかった。



「……は?」



五条さんが眉をひそめる。
そして、わずかに頬を赤くしたまま、むっとした顔で、



「……なんか言えよ」



目が合った瞬間、こっちの顔まで熱くなっていく気がした。



「えっ、いや……その、なんか……」



言いかけて、言葉につまる。
なんでだろう、何から伝えればいいのかわからない。



「びっくりしちゃって、ちょっと」

「でも、五条さんに認めてもらえたみたいで……嬉しいです」



そう言ったとき、自分でも気づくほど口元がほころんでいた。
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