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【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──

第3章 「咲きて散る、時の花 前編」


「は? そこまで言ってねーし」 

 

ぶっきらぼうに、五条さんが顔をそむけた。

 

「調子乗んな、バーカ」

 

言葉とは裏腹に、その耳まで赤くなっていたから、なんだかこっちまでおかしくなる。

 

「つーか、いつまで俺の膝で寝てんだよ」 

「……えっ」

 

突然の言葉に、慌てて身を起こす。

 

「だ、だって、五条さんが……さっき、まだ寝てろって……!」

「それはさっきまでの話だよ!」

 

そう言いながらも、五条さんは私がふらつかないように、ちゃんと手を添えてくれていた。
その手のぬくもりが、じんわりと温かい。



「で――」 

 

唐突に、五条さんが公園の向こうを指さす。
視線の先、キッチンカーの前にクレープの旗がひらひらと揺れていた。

 

「任務に付き合わせたお礼。クレープ、奢れよ」

「えっ、私が、ですか!?」

「当たり前だろ。俺がいなかったら、お前死んでたっしょ」

「……それはぐうの音も出ないですね」

 

苦笑いを浮かべながら立ち上がると、五条さんが満足そうに鼻を鳴らす。

 

「五条さんは何のクレープにしますか?」

「そうだな……イチゴと、チョコバナナだろ。あとシュガーバターに塩バターキャラメルに――」

「そんなにですか!?」

 

あまりの多さに、素っ頓狂な声が出た。

 

「クレープは別腹なんだよ!」

「別腹って、クレープ以外に食べてないじゃないですか……」

 

ぷっと吹き出すと、五条さんも悪戯っぽく笑った。
でも、その表情はどこか嬉しそうで。

 
(なんだろ、ちょっとだけ……任務前より五条さんに近づけた気がする)

 
風がふっと吹いて、甘い匂いが鼻をくすぐった。
視線の先には、クレープ屋へ向かう五条さんの大きい背中。
少し照れくさくて、でもその背を追いかける足取りは自然と軽くなっていた。
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