【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第1章 「香惑の宵**」
五条が部屋に足を踏み入れた瞬間、むっとするような熱気が頬をなでた。
閉め切られた室内の空気は重く、妙に湿っている。
はベッドの端に腰かけ、ぐったりと背を丸めていた。
呼吸は浅く、胸が小刻みに上下している。
「……」
名前を呼ぶと、彼女はゆっくり顔を上げた。
その目はとろんと潤み、焦点が合っていない。
「……悟さん」
声は掠れ、喉の奥からこぼれるようだった。
「朝起きたら、なんか……体、すごく熱くて……」
「……昨日の、漢方のせいじゃないですよね?」
そう言ったの表情は、不安に揺れていた。
五条は、一瞬だけ間を置いてから、静かに首を振る。
「それは関係ないよ。 あれを飲んでそんな症状きいたことないし」
何の迷いもなく、そう言い切る自分の声が、やけに落ち着いている。
(……まあ、嘘だけど)
そして、ごく自然な調子で言葉を継ぐ。
「たぶん、昨日の任務で、ちょっとだけ“呪い”に当てられたんだと思う。 そういうの、あるんだよね。 体に違和感が出たりする」
罪悪感は――ない。
むしろ、の熱に触れた瞬間、理性の奥に沈めていた欲望が静かに目を覚ました。
「え……じゃあ……これが、そうなんですか……?」
は頬を赤らめながら、太ももをぎゅっと押さえるように閉じ、もじもじと膝をすり合わせた。
その仕草に、五条は息を呑む。
を騙しているという感覚は、ほとんどなかった。
それよりも――彼女が「僕じゃなきゃダメ」になる瞬間を、
ただ、待ち望んでいたような気さえした。
「でも、大丈夫。ちゃんと……治す方法があるから」
「ほんと……?」
不安げな瞳が、まっすぐに彼を見つめてくる。
「……だから、僕に任せて?」
その言葉と同時に、五条はそっと近づいた。
ベッドの傍に膝をつき、視線の高さを彼女に合わせる。
その目は優しさを装いながら、静かに熱を帯びていた。
汗の滲む額に、そっと指先を添える。
熱を測るような仕草に見せかけて、肌の感触を確かめている自分がいた。
「……ちゃんと、“抜いて”あげるから」
その声は、あまりに優しく――
けれど、奥底にあるのは、熱を帯びた意志だった。