第8章 7章
「燕先生。つかぬ事をお聞きしますが」
「はい。何でしょう」
もう私は良い感じの気分で
今ならなんでも答えてしまいそう
「…貴女をそこまで駆り立てた原因をお聞きしても?」
「へ?…………えーっとぉ」
回らない頭でそれなりにぐるぐると回答を探す
駆り立てた?
何を?
「睡眠時間を削ってまで描き起こした……ということは何かきっかけがあったのでは?以前おっしゃっていましたよね?ストレスがアイデアを生む。と。」
「…そう、ですね。…言ったかも」
もうそこからは
「あの…本当にくだらないんです」
するすると
「…初めて、ちゃんと恋慕という物を経験したのかもしれません」
「…ほう?」
「……してはいけない相手ではあったのですが。どうしても」
持ってるグラスをぎゅっとする
「文武不相応。と言いますか。身の程を痛いほど感じまして」
苦笑いをしながら残りのお酒を飲む
「でも、ちゃんと決着は着いたはずです。それに。その気持ちを持つことは私の仕事上とても良い経験をさせてもらったなと」
だから
秋くん
あの言葉に揺らいでしまう
[俺の大切な人は、つーちゃんだよ]
今でも鮮明に聞こえる
違う
私なんかには勿体ない言葉
「………そう。ですか。」
小野先生は私のグラスをそっと取り上げ
いつのまにか頼んでいた新しいグラスに変えられる
「燕先生。…わたしにも経験がありますが。きっと同じ気持ちとは言い難いでしょう。その感情は人それぞれ違った意味がありますから。」
そう言って自身もショットグラスをくいっと飲み干し、新しい物を頼む
「ですが、……先生が、、燕さんが望むのであれば。お付き合いしますよ。飲みたい気分だったんですよね?」
グラスに一点集中してたのを小野先生に視線を移すと
不敵な
何だかゾクっとする様な
でも優しさも含まれてる
そんな微笑み方をしていた