第13章 ・探究
店主はそう言うと、手際よくアームを取り外し、丁寧に引き出しにしまい込んだ。
ゾロは、右手を無意識に握り込む。
店主は二度三度、頷いた。
「ピッキングも無駄な力が入ってない。脇も締まってるし、構えも悪くない……初心者にしては、上出来だぞ」
不意に褒められ、ゾロは流石に照れ臭くなる。
「……そうか?まあ、ちゃんと弾ける様にならねえと、意味ねえけどな」
「大丈夫だ、Brother」
ロキが肩を軽く叩く。
「お前の憧れのギタリストだって、始めて数ヵ月でバンド結成の話が来たらしい。相棒の存在もあって、トントン拍子で上手くなったって話だぜ。お前は真面目で努力家だ、続けりゃ絶対弾ける様になる。『継続は力なり』って言うだろ。プロのロックアーティストのおれが言うんだ……自信持てよ」
「そ、そうなのか……」
ゾロは視線をギターに向けつつ、そして静かに頷いた。
「……そうだな、ギター弾くのも修業だ。この新しい『刀』の為にも、頑張るさ」
その言葉に、店主が満足げに笑みを浮かべる。
その後、店主は再度チューニングを確認し、アンプのゲインをゼロに戻した。
更にゾロは、店主とロキから幾つかのパワーコードを教わった。
ぎこちないながらも、彼のギターの音が再び店内に響き始める。
「初心者こそ、クリーンな音でしっかり練習する事が大事だぞ」
店主の言葉を聞きながら、しっかりと確実に指で弦を押さえ、弾いて行く。
弦を押さえる指先に若干痛みが走るが、ゾロはそんな事はお構いなし、と言う体で弾き続けた。
店主曰く。
「兄ちゃんの憧れのギタリストは、パンクロックが大好きでな。奴の作った曲は、そこからも影響を受けているんだよ。あのバンドの心臓と言えるべき存在だった……それ迄の『ギターの概念』をぶち壊したギタリストの一人でもある。理論や基礎をしっかり叩き込むのも大事だが、奴の様に、常識に囚われずに弾き続ける事も大事だぞ」
「バンドの心臓……ギターの常識をぶっ壊したギタリスト……」
ゾロは呟き、ギターの黒いボディを飾る白いデカールを見詰めた。
(このギターそのものが、あのギタリストの『魂』……)
モニターの向こうで、金色の長い髪を揺らしながらギターを荒々しく弾き捲る、あのギタリストの姿が目に浮かぶ。
ネックを掴む左手に、自然と力が入った。