第13章 ・探究
このギターの専用ハードケース……中には証明書とビニール袋に入ったレンチ類、そして黒く鈍く光る棒が入っていた。
店主はその棒を袋ごと取り出し、ゾロに見せる。
彼は手を止め、首を傾げた。
「……そいつは何だ?ただの飾りじゃなさそうだな」
「これは『トレモロアーム』って言うんだ。ブリッジの心臓部だな……音を自在に揺らしたり、音を急激に上げ下げする為の道具さ」
「へえ……音を上げ下げする道具……」
ゾロは興味深そうに、袋に入っているアームを見詰めた。
店主は口端を上げながら、続ける。
「ケーラートレモロは、兄ちゃん憧れのギタリストのプレイスタイルを支えた『魂』みたいなモンだったんだ……どうだい?兄ちゃん、ちょっとアーム使ってみるかい?」
「ああ、使ってみてえ」
「よし、判った。ちょっと待ってな」
店主はカウンターの引き出しから、同じケーラー専用のアームを取り出すと、それをブリッジの右端にある小さな穴にを差し込んだ。
「本当なら、運指も覚えたての初心者が触るもんじゃねえ。変に癖が付くし、何よりチューニングが狂う原因になる……まあ、このケーラーはその点優秀で、狂い難いシステムになってるんだが……兄ちゃんを見てると、こいつの『使い道』を教えない訳には、行かねえ気がしてな」
そう言いつつ、店主は小さなレンチを使い、アームの根元のネジを軽く締めて固定する。
「付け方は簡単だ。ここに差して、時計回りに回しながら、最後迄ゆっくりねじ込んで……二、三回転戻すんだ。これでアームはスムーズに動く。で、ここにトルクを調整するネジ……クラッチって奴があるから、六十四分の一インチの六角ドライバーを使ってアームの動きを調整する。右に回せばトルクがきつくなってアームが固定され……左に回すと緩くなって、アームが軽く動いて『遊び』が多くなるんだ。まあ、その辺は好みの硬さに固定すればいい」
アームの取り付けが終わると、店主はアンプのゲインを上げた。