第13章 ・探究
店主は作業台にそのギターを置くと、ゾロに向かって手招きした。
ロキはその少し後ろで腕を組み、微笑んでいる。
「まずはこれだ。ケーラーは『カム』っていう回転体に弦を引っ掛けて、裏のスプリングと釣り合わせる構造なんだ。フロイドローズみたいに支点で揺れるタイプとは違ってな……このバランスがシビアだ。一本ずつ丁寧に張らねえと、アームの静止位置……つまり『中心』がすぐズレる。そうなると、何時迄経っても音が落ち着かねえ」
「……中心……呼吸を整えて中心を捉える……」
「そうそう、そんな感じだ。その後ろのフックにボールエンドを掛けて……ちゃんと奥まで入ってるか見ろ。甘いと巻いてる途中で弾けるぞ。で、ある程度張れたらロックナットを締めるタイミングだ。ここを間違えると全部狂う。最後にファインチューナーで追い込んで……そこでようやく『実戦』……って訳だ」
ゾロは、神妙な面持ちで頷いた。
店主は説明しつつ、手際良く作業を進めて行く。
「弦はチューニングが不安定になったり、黒ずんで来たら交換時期……大体、一カ月位だな」
ゾロは真剣な眼差しでその店主の説明を聞き、手元を見詰めている。
その目は、誰かの剣技を盗む時と、同じ目をしていた。
店主は続ける。
「弦を全部外した時は、この機会に指板やブリッジ周り、ボディなんかを綺麗に掃除してやるといいよ。指板は乾いた布で拭いて、オレンジオイルかレモンオイルを塗り込んで保湿。フレットはマスキングで保護してから金属研磨剤で磨く。普段は手を入れ難い場所だからな」
説明しつつも、作業の手は休めない。
その手際の良さに、ゾロの目は釘付けになっていた。
「因みに、昔のケーラーと今のケーラーは、弦交換のやり方が少し違うんだ。まあ、それはまた新しいケーラーのギターに出会った時に、教えてやるよ」
店主はそう言って笑った。
話の内容、指先の動き、弦が擦れる音……ゾロはその全てに集中する。
「ギターの手入れは二、三カ月位に一回位が適当かな。勿論、使った後は毎回クロスで丁寧に乾拭きしたり、オイルを塗ってやる事が大事だ。さっきも言ったが……特に乾燥した場所じゃ指板が割れちまうからな、保湿は凄く大事だぞ」
店主の話を聞いたゾロは、化粧品の話で盛り上がるナミとロビンを思い出す。