第13章 ・探究
聞いたゾロは、思わず黙り込んでしまった。
そんな彼の代わりに、ロキが再び口を開く。
「……マスター、あのギターなんだけど、ちょっと見せてくれるかい?」
「はいよ、ちょいとお待ちを」
店主が脚立を使い、慣れた手付きでそのギターを壁から取り外す。
ギターのボディが、店内の照明の光を受けて一瞬眩しく輝いた。
ゾロは思わず息を飲む。
「こいつは『ESP』……我が国ニホンが世界に誇るギターブランドだ。これは今は亡きギタリストのシグネチャー・モデル『Black on Decal』だよ。先日入ったばかりの中古品なんだが、デカールはどっかの店で貼って貰ったんだろな。貼り方がとにかく綺麗でトップコートもしっかり施されてる。他の付属品は手付かずでギターも殆ど使われてない……傷もなく非常に状態のいいシロモノだ。ロキさんがさっき言った通り、もう生産されていないから、凄く貴重な品なんだよ」
店主の話を聞いていたゾロは、思わず眉間に皺を寄せた。
「今は亡きって……まさか死んだのか、そいつ」
「ああ、もう十年以上前になる。そいつが書いた曲は、今でもスラッシュ・メタルの名曲として語り継がれ、聴き続けられている位だ。ファンの間では、リフ・マスターとも言われててな……亡くなったのが早過ぎだ……本当に惜しいよ」
「……そうだったのか……」
店主の話を聞いたゾロは、思わず視線を落とす。
昨日の夜、モニターの中で観たギタリストは、もうこの世界にはいないのだ。
店主は、神妙な面持ちのゾロを見詰めて、静かに訊ねた。
「……兄ちゃん、このギターは初心者向けじゃないけど……もしかして、一目惚れかい?」
「……ああ。こいつと、そのギタリストに『斬られた』……そんな感じだな」
ゾロは苦笑しつつ、そう答えた。
聞いた店主は思わず笑う。
「はっはっは……なるほど……『斬られた』か。流石は剣士さん、なかなかいい表現だね。確かにこいつは鋭くて攻撃的な音を出す。ただな、ブリッジが『ケーラートレモロ』って奴で……弦の交換や調整は初心者には、なかなかの修業だぞ。中に仕込まれたスプリングのテンションって奴が繊細でなあ……」
「へえ、修業か……面白れえ、望むところだ」
「……流石は剣士さん、そう来なくっちゃな。買う買わないは別にして、少しケーラーの弦の交換方法を教えてやろう」
