第12章 ・克己(注…R18)
彼は、彼女を強く抱き締める。
「……ああ、やっぱり……貴方、本当に凄いわ……」
「……言ったろ、おれが『満足する迄』……お前を死ぬ程狂わせてやるからよ。まだまだ、これからだぜ……」
不敵に口端を上げたゾロの瞳には、疲れの色等、微塵もなかった。
リリムは悟った。
この男にとって、この一夜は、更なる高みへと昇るための『鍛錬』に過ぎないのだと。
彼女は、自分が淫魔である事を忘れ、再び動き出した野獣の激しい攻撃を受け入れ……深く甘い破滅の世界……彼が織りなす『快楽地獄』へと、身を投じて行った……。
……数時間後。
夜が、少しずつ薄れて行く。
早朝の薄い光が、カーテンの隙間から部屋に入り込む。
窓の外には、まだ人の気配はない。
ゾロは仰向けになったまま、天井を、じっと見詰めていた。
テレビ画面に映った男女の映像をふと思い出し、思わず苦笑する。
結局、四度……彼女の中に、マグマの様な熱を放った。
淫魔の飽くなき渇愛を、彼はその強靭な肉体と燃える様な闇の力で全て受け止め、強き魂を持って逆に捻じ伏せたのだ。
最後の一滴迄絞り取ろうとしたリリムの方が、何度も何度も絶頂と言う『地獄』に落とされ……穏やかな顔をしている。
彼女はゾロの逞しい右腕にしがみ付きながら、彼の顔を見詰めていた。
並の男なら、魂そのものを吸い尽くされ、廃人となっていてもおかしくない程の、長く濃密な情交……。
しかし、隣に横たわる男の眼光は少しの濁りもなく、ただ天井を見据えている。
リリムは、そんな男の強い眼光から、目を逸らす事が出来なかった。
「……起きたか……」
視線を感じたゾロの声は低く、しかし何処か柔らかい。
リリムは微笑んで、頷いた。
「……うん」
カーテンの向こうから、薄っすらと淡い光が見える。
ゾロは目を擦りつつ、ベッドの横に置いてある時計に目を遣った。
時計の針は、三時五十分を回っていた。
「もう、朝か……」
そう呟いた後、短く欠伸をする。
腕にしがみ付いていた温もりが、ゆっくりと離れて行く。
脱いだ服を身に着け、窓辺に歩み寄るカーテンを開ける。
夜が明けて行く空を仰ぐ彼女の顔に、もう悲しみの色はない。
「……私、行くね。本当にありがとう、お兄さん」
ゾロは視線を彼女に向けず、ただ片手を軽く振る。