第11章 ・東京
スピーカーからは、少し歪んだ雷の様な音が響いていた。
ゾロはその指先やピッキングを頭に叩き込む様に、じっと見詰めている。
「本当は『チューナー』って奴でちゃんと音を合わせるんだ。ギターを弾く時、必ずやる事だ……後で詳しく教えてやるよ」
ゾロは無言で頷くと、近くにある椅子に腰掛けた。
渡されたギターを抱え、ピックを握る。
ピックは刀よりずっと軽い。
だが、妙に手に馴染む。
ロキがその持ち方や角度、力加減等を、簡単に指南する。
「……よし。さあ、鳴らしてみろよ、Brother。お前の音を聞かせてくれ」
ゾロは、大きく息を吐く。
六本の弦を、斬る様に振り抜いた。
アンプが野獣の様に吠えた。
荒い残響が腕から胸へと突き抜け、抱えたギターが振動し、ゾロの全身を叩く。
あのギタリストの音には程遠い。
だが耳を劈くその音は、確かに『斬る』に聞こえた。
ゾロの口元が僅かに緩む。
「……悪くねえな。この刀も」
彼の表情を見たロキは、満足そうに笑った。
ゾロはもう一度、弦を鳴らした。
体中に残る震動を噛み締める様に、ゾロは口端を上げた。
ブルックの奏でる魂の旋律……『ソウル』とは違う音。
血を滾らせ、敵を薙ぎ払う……魂を揺さぶる鋭い音。
「気に入ったか?いい顔してるぜ、Brother」
ロキは、満面の笑みを浮かべている。
ゾロの瞳に映るギターの影が、微かに揺れる。
ゾロの中に、新しい『修業』の火が灯った瞬間だった。
彼は、決意した。
「……なあ、ロキ」
ゾロはギターを見詰めながら、続けた。
「何時か弾ける様になったらよ……その時は、一緒にやってくれねえか……?」
その言葉に、ロキの顔が一気に明るくなる。
「いいねえ!やろうぜ、Brother!」
彼は満面の笑みを見せ、言った。
「さっきのはスラッシュ・メタル。速くて攻撃的だ。お前向きだが……簡単じゃねえぞ」
「望むところだ」
ゾロの口元が僅かに上がる。
「ただし本気なら毎日何時間も弾け。遊びじゃねえ世界だ」
「……何からだ?」
「まずチューニング。次に指とリズム。コードを覚えて、理論も少しな」
ロキはギターを構え、指の形を示す。
「ほら、まずこれ。難しいコードだけどよ、お前なら押さえられる」
ゾロは黙って真似た。