第11章 ・東京
この映像の音が、スピーカーを通して店内に流れている様だ。
そこに映し出されている、長髪のギタリストに目が止まる。
金色の髪を揺らすギタリストの右腕が、目にも留まらぬ速さで上下している。
それは演奏と言うより、斬撃に見えた。
振り下ろされる度、空気ごと、断ち切られる様な重さがある。
ゾロは無言のまま、その手元を追っていた。
その音がスピーカーを震わせる度、背筋に戦慄が走る。
彼が手にしているギターのアートワークにも、ゾロの視線は釘付けになった。
黒いボディに白くはっきりと浮き上がる髑髏や『RAIDERS』等のアートワークが、空を斬り裂く音と共に、彼の心を惹き付ける。
(こんな凄えギター……初めて見た)
ゾロは、ふと、仲間であるブルックの旋律を思い出す。
(あいつの音は仲間を癒し、敵を魅了し倒す音……だが、この音は違う。もっと荒々しく……攻撃的な響きだ)
胸の奥が、妙に騒ぐ。
(……このギターの音……やっぱり『斬る音』に似てる……)
一瞬、脳裏に戦場の記憶が過った。
刀を振る度に生まれる、刃で斬り裂く鋭い音。
ギターの音がそれと重なり、彼の魂を震わせる。
ロキがカクテルグラスを傾け、微笑んだ。
「何だ、Brother。ギターに興味が出て来たか?」
「ああ……仲間の音とは、何かが違う……」
ゾロはモニターから目を離さない。
「……刀で斬る音に、似てる」
「ほう、いい感性してるな」
ロキは軽く笑い、指先でリズムを取る。
「ギターはな、魂を震わせる楽器なんだ」
ロキはカクテルを口にして、言った。
「まあ、おれに言わせりゃ……『音の剣』ってとこだな」
「音の剣……」
ゾロの瞳に、モニターの中のギタリストが映り続けている。
傷一つ付けず、聴く者の心と魂を震わせる『刀』。
その概念が、ゆっくりと形になって行く。
画面の中では、バンドが最後の曲に突入していた。
観客はリズムに合わせて頭を振り、拳を上げ、十数人がモッシュを作って走り回っている。
高速でスネアを叩きツーバスを踏むドラム、ベースを唸らせながら叫ぶボーカル、そして二人の凄腕ギタリスト。
片方はスキンヘッドにタトゥーを入れたギタリスト……フライングVのギターの弦をテクニカルに弾き捲り、聴く者を狂気へと駆り立てる。