第11章 ・東京
三振りの刀を腰に差したその時、青い髪をしたキャストの、柔らかな声が耳に届いた。
「……ゾロさん、本当にありがとうございました!」
彼女に『道』を教えた三刀流の剣豪は、一瞬だけ足を止め、振り返らずに片手を上げて応える。
キャスト達の視線は、完全にゾロの背中を追っていた。
(くそー……ここに来たら、おれのモテモテ振りを見せ付けられると思ったのに……)
ロキはクレジットカードで支払いを済ませると、バニーガール達に顔を見せる事なく、黒服に軽く挨拶をしただけで、さっさと店を出てしまった。
「ロキさん、ゾロさん、また来てねー!!!」
女の子達の声を背に、彼等はまた夜の街へ。
ロキの後ろを歩くゾロの背後で、店のドアが静かに閉まる音がした。
ロキはゾロを連れて、またシンジュクに瞬間移動する。
少し蒸し暑い初夏の夜。
ゾロの喉は、まだ酒を欲していた。
少し歩いて気が晴れたのか、無言だったロキが口を開く。
「……次はHEAVY METAL BARだ。こっちの方が、お前にはお似合いかもな。お前の世界にある音楽かは判らねえけど……酒はあるから楽しみにしとけ」
ロキの言葉に頷きつつ、ゾロは彼の後を歩いて行った。
彼等の姿が、夜の街に溶けて行く。
光が溢れる街の中を暫く歩くと、目的の店が見えた。
案内されたのは、赤いネオンサインが輝く店……『HEAVY METAL BAR - DARKNESS & LIGHTNING』。
扉を開けると、空を斬り裂く様な高速ギターリフが、ゾロの耳を劈いた。
壁にはギターやベース、ドラムスティック、アーティストのサイン等が飾られ、まるで武勲を誇る戦場の記録の様に並んでいる。
客が曲に耳を傾けつつ、酒や食事を楽しんでいた。
今迄耳にした事のない激しい音楽に、ゾロは思わず苦笑する。
「……すっげえ騒がしいな」
「それがいいんだよ、Brother。ここじゃ、このHEAVYでLOUDな音が生きる魂の証さ」
ロキが笑い、カウンターに腰を下ろした。
彼の動きは軽やかで、リズムそのものが彼の体を操っている様だ。
流石はロックバンドのボーカリストである。
ゾロは彼の隣に座り、ゆっくりと周囲を見渡す。
店の奥に鎮座している大きなモニターが、視界に入った。