第11章 ・東京
「ま、そう言うとこが……お前がモテる理由なんだろうなあ、Brother」
「……だから、おれぁ、そんなモテねえって……」
女に疎いゾロである。
本当に気付いていないのだろう。
顔を顰める彼に、隣に座る青い髪のキャストが、そっと言葉を添えた。
「ゾロさん、貴方みたいな男の人を『モテる男』って言うんですよ」
「……あぁ?」
ゾロは苦笑いを浮かべて青い髪の女の子を横目で見つつ、差し出された水割りを煽った。
氷の鳴る音と笑い声が、何処となく耳に心地良い。
ロキはグラスを片手に、苦笑いを浮かべる。
「ほんっと、判ってねえよなあ……お前、何事にもクソ真面目過ぎるぜ……」
ロキは半ば呆れた様に笑い、水割りを一気に煽ると、探る様な目でゾロの顔を覗き込んだ。
「あー、そうか......なるほど!お前はクソ真面目君だからよ、本気で好きになった女には、メロメロになるタイプだな。一途なんだろっ!!そうだろ、そうなんだろっ!!いやきっと、絶対そうだ!!」
「……あぁ……?」
グラスを持つゾロの手が、一瞬止まった。
聞いたゾロは、ナアマに言われた言葉を思い出し、思わず視線を落とした。
『……お前は愛に、一途な男であるぞ……』
だが、そんな情熱を捧げるに値する相手に等、これ迄一度も出会った事はない。
彼はそっぽを向き、差し出されたばかりの水割りを、喉に勢い良く流し込む。
そして、呟く様に返した。
「……そんな女、今まで会った事もねえよ」
「……本当お前、詰まんねえ生き方してんな。可愛い子なんて、ほら、ここにも一杯いるのによ。勿体ねえなあー……
「本当、お前なあ……もうちょい静かに飲めねえのかよ……」
突然、ロキは両手で髪を掻き乱し、ベルベットソファーの背もたれに預けていた体を跳ね起こした。
「あーっ、ちくしょーっ!!おれも女の子に誘われてえーっ!!!」
「……何処行くんだ」
「ち、ちょっと、用達しだっ!!」
周囲の笑い声が弾ける中、ロキの心の中に、モヤモヤした感情が生まれた。
キャストの視線が、何時の間にかゾロばかりを追っている。
無理に作った笑顔が、廊下の鏡に映る。
(……あいつは自分とは、何かが違う……『自分』って剣を研ぎ続けてる奴だけが持つ強さ……強烈な『光』みてえだ……)