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魔王之死刀

第11章 ・東京


「……そんな女を無下に出来る程、おれはまだ、冷てえ男になり切れてねえらしい……」

 言葉はぶっきらぼうだったが、声には妙な照れが混じっていた。
 キャスト達の視線が、自然と彼に集まる。
 ロキは、肩を竦めて笑った。

「なるほどな。硬派なクセに情に弱い……そりゃモテる訳だ、Brother」

 ゾロは答えず、水割りを口にするだけ。
​ 淡々と飲み続ける男の言葉には、決して『欲』等混じっていない。

「……しかし、Brother、意外に流され易いのか? それとも、来るもの拒まずって訳かよ」

​ ロキの軽口に、ゾロの隻眼が鋭い光を一瞬放つ。

​「……勘違いすんな。誰でもいいって訳じゃねえよ……誰かを平気で裏切る様な奴や、筋の通らねえ誘いには、おれは死んでも乗らねえよ」

​ 彼は、空になったグラスを置く。

(​女がどうこうじゃねえ……『覚悟』のねえ相手と向き合うのが、嫌なだけだ……)

 その席にいたキャスト達だけでなく、ロキ迄もが、圧倒され黙り込む。
 ただの不器用な男ではない。
 ゾロと言う男の中には、鉄よりも硬く強い『選別の美学』があった。

​「……裏切りね……不倫や浮気は、お前の『道』に反するって訳か。何処迄も潔癖な野郎だな、Brother」

​ ロキは納得した様に笑い、ゾロの肩を叩いた。
 ゾロは何も答えず、ただ無言で手元に置かれた水割りを口にする。
 キャスト達はそんな彼の姿を見詰め、そして微笑んだ。

「……結局、男らしくて優しいんですね、ゾロさんて」

 一人のキャストの言葉に、ロキが思わず慌てる。

「お、おいおい!みんな、惚れんなよ!こいつ、そう言うとこマジで鈍感だぞっ!!」

 ロックミュージシャンの言葉が、その場を和ませる。
 席に笑い声が戻り、ゾロは眉を顰めた。

「……ロキ、お前、ほんっと余計な事しか言わねえな」

「だってよ、そう言っとかねえと、こいつらマジでお前の取り合い始めるぞ?」

 ロキがわざとらしく肩を竦める。
 彼女達は楽しげに顔を見合わせた。
 ゾロは溜息を吐き、グラスをテーブルに置く。

「勝手にしろ……おれは飲むだけだ」

 愛想なく言いながらも、どこか気恥ずかしそうな横顔を見せる。
 ロキはそんな彼を見て、ニヤニヤ笑いながらグラスを傾けた。
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