第11章 ・東京
だがアームは景品をすり抜け、虚しく戻って行く。
「……チッ」
「ははっ、やっぱそう簡単にゃ取れねえんだよ……まあ、それが醍醐味って奴なんだけどな」
「……次は掴む」
再びコインを投入する。
二度目、三度目。
アームが微妙にずれる。
景品はほんの少し動くだけ……ゾロの表情が険しくなる。
ロキは腕を組み、ニヤ付きつつ見守っていた。
「もしかして、剣の稽古の時より集中してんじゃねえの?」
「……少し黙ってろ」
低く返す声には、妙な迫力があった。
四度目の挑戦。
ゾロは呼吸を整える。
アームを慎重に動かし、タイミングを見極め、ボタンを押す。
アームがゆっくりと降り、刀のキーホルダーを掴んだ。
カチリ、と爪が閉じ、持ち上がる。
だが落とし口の寸前で、僅かに傾き……ポトッ、と、落ちた。
ゾロは眉間に皺を寄せながら数秒、無言のままキーホルダーを見詰めた。
その表情は、明らかに苛立っている。
今迄の彼なら、とっくに口に出しているだろう。
(……ぶった斬る……)
その言葉を、彼は吐き出さずに飲み込んだ。
一部始終を見ていたロキは堪え切れず、遂に噴き出した。
「ククククッ……ハハハハハッ!!おいおい、顔がマジ過ぎだぜ!!景品相手に殺気出してどうすんだよ!!!」
「殺気じゃねえ、集中してんだ……!!!」
「いやいや、思いっ切り殺気立ってるだろ!!!」
ロキは大笑いしつつ、突っ込んだ。
しかし五度目の挑戦で、ゾロは遂に掴み取った。
彼の口から、大きな溜息が一つ。
景品の落とし口に転がったキーホルダーを拾い上げ、徐にロキの前に差し出した。
「ほらよ」
「ん?お前のだろ?」
「……お前にやるよ」
呆気に取られたロキは言葉を失い、そして静かに笑って答えた。
「ありがたく受け取っておくぜ、Brother」
ゾロは少しだけ目を逸らし、一言だけ呟いた。
「……連れて来てくれた礼だ」
「判ってるって」
ロキの笑い声と、周囲の喧騒が重なって響く。
その後、彼等は格闘ゲームや本格派レーシングゲームに夢中になり……そこを出た時、既に外は深き夕暮れ。
ネオンの光が、辺りを包み込もうとしていた。
仕事が終わり、家路を急ぐ人々で街は賑わう。
料理店や酒場に吸い込まれて行く人影も、少なくない。