第9章 雄英体育祭
交戦は再開した。
激しい衝突のあとにも関わらず、の攻撃は止まらなかった。
むしろ過去を話したことで、ストッパーが外れたようだった。
彼女は足場を崩し、即座に修復して跳躍。
拳を叩きつけ、また間合いを詰める。
その一手一手に、執念のような熱がこもっていた。
デクは防戦一方。
力の制御を慎重にしすぎて、の猛攻を受けきれない。
緑「繋原さん、速い……っ!」
それでも、避けて、受けて、反撃の糸口を探していた。
だがそのとき――
「……2位じゃ、意味がない」
繋原の声が、重く場に落ちる。
「勝たなきゃ……意味がないんだよ。認められないと…生きてる理由を、自分で証明しないと……!」
マイクの実況が、一瞬止まる。
マ「な……なんという執念だ!これは、まるで……“勝利”そのものが、生きる術のようだァ!!」
客席がどよめく。
緑「勝たなきゃ意味がないって……そんなこと……」
八百万が胸元で手を組み、切島は苦々しい表情で拳を握っていた。
そしてお茶子の目からは涙があふれていた。
デクが、顔を上げる。
瞳が、揺れていた。
緑「……そんなこと、ない!!」
突然、デクが叫んだ。
宙を待っていた2人は着地する。
そしてその声は、観客席にも届くほど強かった。
緑「確かに!自分のためにって気持ちは、誰かのためにって理想よりも、ずっと自分勝手なのかもしれない!でも……!」
デクの瞳が潤む。
緑「でも!あの時!ヴィランに囲まれて、それでも逃げなかった繋原さんを、僕は見た!」
相澤の目が静かに動いた。
「っ…!」