第9章 雄英体育祭
緑「こちらこそだよ…繋原さん…あぁ…」
デクもその場で膝をついた。
緑(ギリギリだった…少しの動揺があったから勝てたものの…もしそうじゃなかったら…勝てなかった…)
デクは尊敬の眼差しで保健室へと運ばれていくを見つめていた。
──観客席。
轟(……何が“少し”過酷だ……)
静かに目を細めた轟の胸に、
鈍い痛みが走る。
轟(俺なんかより……お前の方が、よっぽど……)
轟は次に試合を控えるため、行きたい気持ちを抑え、控え室へと向かった。
爆(……チッ)
腕を組んだ爆豪は、顔を伏せた。
爆(俺と戦うんじゃ……ねぇのかよ……)
数秒の沈黙のあと──
切「……ちょっと、様子見てくるわ」
立ち上がったのは、切島だった。
いつもの笑顔はそこになく、
どこか真剣な、友達を気遣う目だった。
切島に続くように、上鳴が席を立つ。
上「俺も……放っとけねぇよな」
障「俺たちも行くぞ」
障子も立ち上がり、峰田に声をかけた。
峰「で、でもおいらは…」
障「無理にとは言わない。でもさっきの発言、謝った方がいいと俺は思う」
峰「…」
峰田は少し気まずそうな顔をしながら席を立った。
麗「……繋原ちゃん……」
お茶子は拳を握りしめ、立ち上がる。
蛙「行きましょう、お茶子ちゃん」
蛙吹がそっと声をかけると、
お茶子は小さく「うん」と頷いた。
耳「……行こう」
八「ええ。私たちも」
耳郎と八百万もまた、
それぞれの想いを胸に、
静かに席を立った。
そんなA組の面々を見送るように──
マ「……行かなくていいのか、イレイザー?」
マイクが、ふっと肩をすくめて尋ねる。
相「……もう、あいつのそばにいるのは」
少しだけ目を細め、
保健室へと向かう生徒たちの背を見つめながら──
相「……俺だけじゃないからな。それに……他の奴らも、見てやらねぇと」
マ「……やっぱ、甘いねぇ」
そう言って、マイクは笑った。
相「……うるせぇよ」
相澤は、そう返しながら
少しだけ、口元を緩めたのだった。