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ラストラインを越えて

第31章 再有馬


次の瞬間、唇の隙間から息とも嗚咽ともつかない音が漏れる。
「その調子です、ホマレ……戻ってきなさい」
蘇生の兆しが見えた。
神座は声をかけながら慎重に圧迫し続けた。
やがて救急救命士らがストレッチャーと共に駆けつけ、神座は指示に従いホマレを引き渡す。
不安げにざわめく観客たちに見守られつつ、救護班によって滞りなく処置が施されていく。
あっという間に引き継ぎがなされ、ホマレを乗せたストレッチャーがそばに停められた救急車まで運ばれていく。
積み込まれるその瞬間、ストレッチャーから何かが零れ落ちるのが見えた。
「……?」
救急車が去った後、芝の中に隠れるように消えたそれの元へ近寄り、拾い上げる。
星型の真鍮に房飾りがついている。ホマレの耳飾りだった。
神座の手のなかで、中心にはめ込まれたジルコニアが夕日を受けて静かに煌めく。
「(あとで渡さないと……)」
神座の額から伝った汗を拭いながら、星の耳飾りをジャケットの内ポケットにしまい込んだ。









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