第28章 2度目の夏合宿
神座は引退したウマ娘から鞍替えして、新しいウマ娘を受け入れるだろう。そのサイクルをこの先の何十年と繰り返し、自分との記憶はいずれ風化していく。
『(やっぱり、ただ担当で居続けるだけじゃ足りない。一生一瞬も頭から離れないような、特別な存在になりたい)』
最後の一発が夜空で散った後、しばらく無音が続く。
ホマレは小さく息を吐き、耳の奥に残る余韻を振り払うように瞬きをした。
『(そうならなくちゃ……いや、絶対になってやる)』
街灯がぽつぽつと照らす薄暗い夜道を静かに歩いて帰る。
やがて波の音が近くなり潮風がホマレの肌を撫でる頃、馴染みのある宿舎の明かりが遠目に見えた。
明日には発つ予定の施設なのにどこか安心した心地になる。
『(来年にはこの関係も何か変わってるといいな……)』
隣を歩く神座の脚にこっそり尻尾をすり寄せながら、ホマレは残り少ない帰路を辿っていった。