第28章 「善意の逆理 Ⅰ**」
「芻霊呪法――共鳴り」
金槌が振り下ろされ、釘が藁人形に深く食い込んだ。
「っ……!」
白衣についた血を通じて、呪力が流れ込む。
細井がバランスを崩し、背後の壁に背中をぶつけた。
「……はっ、こんなことで」
細井が鼻で笑って、再び体勢を立て直そうとする。
「お前、今テメェ自身の感覚、開きっ放しにしてるんだろ」
野薔薇ちゃんが、冷たく笑った。
「私の本命は、こっちだよ」
パチン、と野薔薇ちゃんの指が鳴る。
「芻霊呪法――簪(かんざし)」
その瞬間だった。
細井のすぐ背後の壁。
さっき野薔薇ちゃんが放って、彼があっさりと避けた三本の釘。
そこから、爆発的な呪力が弾け飛んだ。
カァンッ!!!
「が、はっ……!?」
轟音と閃光。
細井の身体が、不自然に大きく跳ねる。
自分の感覚を極限まで高めていた細井にとって、至近距離での呪力の炸裂は、致死量の刺激だった。
「あ、が……っ! ぎゃあぁぁぁっ!!」
大きく目を見開き、細井が自分の両耳を激しく掻きむしる。
そのまま床へ崩れ落ち、痙攣した。
野薔薇ちゃんが金槌を肩に担ぎ直す。
「お前の敗因はさ。人にペラペラ、自分の術式を喋っちまうところだよ。馬鹿が」
細井は白目を剥いたまま、床の上で動かない。
野薔薇ちゃんはそれを一瞥すると、すぐにこちらを振り返った。
「っ!」
「ちゃん……っ!」
二人が私の方へ駆け寄ってくる。