第29章 「善意の逆理 Ⅱ**」
「あっ、あっ、あっ……っ、や……ん、っく……!」
僕に突かれるたびに喘ぐ、唇を塞いでやる。
声も、呼吸も、逃げないように。
僕の中にあるものを、少しでも多く彼女へ届かせるように。
「……ッ、ん、むぅッ……!」
舌を捩じ込んで、の口内を隅々までかき回した。
ちゅっ、じゅる、……ちゅる……。
柔らかくて小さい舌。
甘く熱を帯びた感触が絡むたび、僕の理性を少しずつ溶かしていく。
(……めちゃくちゃ気持ちいい)
一度触れたら、もう離したくない。
もっと、もっと。
「んんっ、く……っ、ぁ……」
自分でも抑えが効かなくなっていくのを感じながら、僕の唾液をたっぷりと流し込んだ。
今、の身体は上から下まで、全部僕のもので満たされている。
そう考えただけで、僕の欲が昇ってくる。
が苦しそうに喉を鳴らしたのがわかって、ようやく唇を離した。
「……は、ぁ……っ、ん、あ……っ」
の口の端から、とろりと銀色の糸が零れ落ちる。
飲み込みきれなかった僕の唾液が、顎をつたって光った。
荒い呼吸に合わせて、濡れた唇がだらしなく開いたままになっている。
(あーーーー……、もう)
僕は顎をつたうその雫を親指で乱暴に拭い取って、またすぐにその可愛い唇に吸い付いた。
同時に、何度も何度も腰を打ち付ける。
深く繋がったまま、彼女の名前を心の中で繰り返す。
。
。
。
ふと、微かに開かれた瞳と視線が絡んだ。
とろけて焦点の合っていなかった瞳。
それが、いつの間にか吸い込まれそうな翠色に染まっていた。
「……?」
思わず、動きを止める。
違う。
今、僕を見ているのは――
悠蓮、なのか。
そう思った次の瞬間、の腕が僕の首に回った。
震える指が、僕の背中にぎゅっと縋る。