第28章 「善意の逆理 Ⅰ**」
「!! いるの!?」
外から、聞き慣れた声が聞こえた。
(え……?)
ガチャ、ガキンッ!
鍵を無理やりこじ開けるような音がする。
閉ざされていた倉庫の鉄扉が、勢いよく開かれた。
「……なっ、なんだ貴様ら!」
細井が弾かれたように、入り口を振り返る。
暗闇の向こうから差し込んだ懐中電灯の光に、思わず目を細めた。
視界の先に、二つのシルエットが見える。
「……きもいんだよ。このへんたい野郎」
底冷えするような、苛立ちを含んだ低い声。
(この、声……)
開け放たれた扉の向こうに立っていたのは、金槌を握りしめた野薔薇ちゃんだった。
その後ろには、息を切らした真澄ちゃんの姿もある。
野薔薇ちゃんの目が、私を見た瞬間に大きく見開いた。
「……あんた、に何したの」
細井が舌打ちをして、野薔薇ちゃんを睨みつけた。
「邪魔をするな。部外者が……お前も、私の術式で狂わせてやる!」
細井が手を前に突き出す。
けれど野薔薇ちゃんは一歩も引かず、手にした金槌で三本の釘を連続で弾き飛ばした。
カンッ、カンッ、カンッ!
「遅いな」
細井がゆらりと身体を揺らして、飛んできた釘をあっさりと避ける。
釘は背後の壁に空しく突き刺さった。
「私の術式は、自身の感覚も高めることができる。今の私にとって、お前の攻撃など止まって見えるんだよ」
「……なるほどね。当てるのは難しいってことか」
野薔薇ちゃんは私の足元に落ちた血痕と、細井の白衣の袖についた赤い染みへ視線を滑らせる。
それから、手元で釘をくるりと回した。
「よくやったわ、」
床に落ちていた血を釘の先で掬い取り、藁人形にこすりつける。
「無駄だ。そんなもので私を呪えるか!」
細井が術式を放とうと踏み込んだ、その瞬間――