第28章 「善意の逆理 Ⅰ**」
もうやめてほしいのか、もっと欲しいのか。
自分でもわからなくなっていく。
その曖昧さごと押し流されて――
「……やぁっ、ぁ……」
身体がびくびくと震えて、力が抜けていく。
……嘘。
今ので、私……。
認めたくないのに、身体だけが答えを知っていた。
「ははっ、気持ちいいか?」
細井が、ひどく下劣な笑い声を上げる。
(……っ、この……!)
涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げて、細井を睨みつけた。
「……まだ、そんな元気があるのか。さすが、呪術師だな」
私の視線を受けても、細井はまったく動じていない。
むしろ、心底楽しそうに目を細めていた。
「まぁ、いい。少し、強くするか」
細井がまるでオーディオのつまみを回すように、指先を動かす。
その直後、身体はさらなる快感を求めて激しく疼き始めた。
(やだ……っ。もっと、なんて……っ)
頭では、こんなに拒絶しているのに。
身体の芯から、どうしようもないほどの熱と欲求が込み上げてくる。
早く、どこでもいいから触ってほしい。
……違う。
今のは、違う。
そんなこと、思っちゃだめ。
思いたくない。
でも、一度浮かんだ願いは消えてくれなかった。
身体の奥で熱が膨らんで、もっと、もっとと急かしてくる。
嫌なのに。
その手を待っている自分がいる。
怖いのに。
狂ってしまいそうなほどの快感で、いっそこの頭の中をぐちゃぐちゃにしてほしい。
細井が、私の顔を間近で覗き込んだ。
「こな……いで」
「その生意気な口も、もっと素直にしてやろう」
細井の顔が近づいて、生ぬるい息がかかった。
嫌だ。
気持ち悪いはずなのに、触れられた場所がまだ熱を持っている。
次なんて望んでいない。
望んでいない、はずなのに――
(ちがう……こんなの、ちがう……っ)
細井の粘り気のある唇が、私に近づいてくる。
(ふざけ、るな……っ!)
最後に残った力をかき集めて、身を起こした。
「が、ぁっ!?」
嫌悪も、恐怖も、怒りも、全部そこに込めて。
私は、細井の唇に噛みついた。