第28章 「善意の逆理 Ⅰ**」
ハッと、目を開けた。
(やばい、寝ちゃった……っ! 見張り中なのに……!)
先生とメールをして、すっかり安心してしまって。
いつの間にか、うとうとと眠りに落ちてしまっていた。
バサッと布団をはねのけて、急いで向かいのベッドへ視線を向ける。
「…………」
綺麗にめくられた毛布。
さっきまでそこで寝ていたはずの、女の子の姿がない。
(嘘、なんで? トイレ……?)
ベッドから飛び降りて、急いで部屋のドアを開けた。
薄暗い廊下に飛び出し、左右を見渡す。
「……ぁっ!」
暗がりの中で、女の子の小さな背中が廊下の角を曲がっていくのが見えた。
(待って……っ)
足音を殺しながら後を追う。
曲がり角からそっと覗き込むと、女の子は階段を下りて一階へ向かっていた。
(トイレじゃない。どこに行く気……?)
足取りはフラフラしているのに、どこか迷いがない。
そのまま裏口へ向かい、外の暗闇へ出ていった。
私も一定の距離を保って後を追う。
暗い校庭の端を、彼女は歩き続けていく。
やがて足を止めた先は、校舎の裏手にある体育倉庫だった。
ギィッ……と錆びた鉄の扉を開ける音が、静かな夜の学校に不気味に響き渡る。
女の子はそのまま、真っ暗な倉庫の中へと吸い込まれていった。
少し離れた木の陰に身を隠し、息を殺す。
扉の向こうは、不気味なほど静まり返っていた。
しばらく待ってみても、中に動きはない。
(中で、何してるんだろう……?)
このまま放っておくわけにはいかない。
でも、一人で踏み込むのは危険だ。
野薔薇ちゃんに連絡して、合流してから中に入った方がいい。
そう思って、ポケットからスマホを取り出そうとした、その瞬間――