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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第28章 「善意の逆理 Ⅰ**」


***



借りもののベッドは、なんだか落ち着かない。
布団を首元まで引き上げて、そっと寝返りを打つ。


向かいのベッドでは、彼女が壁のほうを向いて丸くなっている。
さっきの拒絶から、ずっと一言も口をきいてくれないままだ。


(でも、一人にするわけにはいかないし……)


見張りを兼ねて、空いていた相部屋の子のベッドを借りた。


消灯時間を過ぎた部屋は、しんと不気味なくらい静まり返っている。


(……寝ちゃったかな)


暗闇の中、目を凝らす。
顔は見えないけれど、さっきみたいな酷い震えは収まっているみたいだ。


(とりあえず、落ち着いてるみたいでよかった)


野薔薇ちゃんと真澄ちゃんは、そろそろ寮を抜け出している頃だろうか。
頼もしい二人だから、きっと大丈夫だとは思う。


でも。
真っ暗な部屋の中でこうしていると、なんだか急に心細くなってきた。
布団の中で何度も手を擦り合わせているのに、指先はずっと冷たいままだ。


今日、食堂で見たあのおぞましい光景。
真澄ちゃんから聞いた、過去の出来事。


考えれば考えるほど、胸のあたりがざわざわして落ち着かない。
こんな時、どうしても先生の顔が見たくなる。


不安を振り払うように、こっそりとスマホを取り出した。
画面の明かりを一番暗くして、ロックを解除する。


写真のフォルダを開いて、大切にしている一枚の写真をタップした。
以前、先生と一緒に泊まった、熊本の温泉旅館での写真だ。
満面の笑みの先生と、顔を真っ赤にしている私。


(楽しかったな……)


仲居さんに写真を撮ってもらう時。
先生がぐいっと私の腰を抱き寄せて、頭が肩にぶつかるくらい近くて。
浴衣越しに伝わってきた、先生の体温。
耳元で囁かれた意地悪な声に、ドキドキしたこと。


画面の先生の顔を、そっと親指でなぞる。


いつもふざけているのに。
でも、誰よりもやさしく私の名前を呼んでくれる人。
大きくて、温かいあの掌。


(会いたいな……)


先生のことを考えるだけで、不思議と冷えていた指先がじんわりと温かくなった気がした。
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