第28章 「善意の逆理 Ⅰ**」
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野薔薇ちゃんたちと別れた後、私はさっきの女の子の部屋の前に来ていた。
(見張るって言っても、外に突っ立ってるわけにはいかないし……)
意を決してドアをノックする。
「……誰?」
中から、ひどく怯えたような小さな声が聞こえた。
「あの、です。……入ってもいいかな?」
わずかな沈黙の後、カチャリと内側から鍵が開く音がした。
ドアが細く開いて、女の子が不安そうにこちらを覗く。
相部屋の子は別の場所に移動したのか、部屋には彼女は一人きりだった。
「あなた、さっきの……」
「一人だと不安かと思って。というか、実は私も怖くて……一緒にいてもいい?」
女の子は少し戸惑っていたけど、こくりと頷いてくれた。
(よかった……)
彼女がベッドの端に腰を下ろすのを待ってから、私もそばにあった椅子に座る。
間近で見ると、彼女の顔色はまだ良くなかった。
けれど、さっきみたいに取り乱してはいない。
「……さっきは、ありがとう」
「ううん。あんなことがあったんだもん。誰だって、パニックになるよ」
「…………」
会話が途切れてしまった。
彼女は膝の上で指を握りしめたまま、視線を落としている。
まだ、あまり話してくれる気配はなかった。
本当は、聞きたいことは山ほどある。
『あの子』って誰なのか。
どうして、自分が次に殺されると思っているのか。
亡くなった子たちと、何があったのか。
それに、細井先生のことも。
けど、今それを全部ぶつけたら……警戒されてしまうかも。
(ここは、まずさりげない会話からだよね)
緊張をほぐせるような話題はないかと、きょろきょろと部屋の中を見渡す。
ふと、机の上に置かれていた一冊の雑誌が目に入った。
表紙に載っているのは、見覚えのある灰色の瞳――須和さんだ。
「あ、これ……」
私が指をさすと、女の子は顔を上げて雑誌を見た。
「ああ……。その人、今度学校に特別講演に来るのよね。頭も良くてかっこいいから、最近はみんなその話題で持ちきり」