第28章 「善意の逆理 Ⅰ**」
「とにかく。その子を退学に追い込んだ連中は、今後も狙われる可能性が高い……問題は、どうやってあの種を飲ませてるかよね」
野薔薇ちゃんが、苛立ったように指で膝を叩く。
「でも、少なくともあの術式は完全な遠距離型って感じじゃない。誰かが近づいてるはずよ。直接か、それに近い方法で」
「つまり……ターゲットに接触した人が怪しいってこと?」
「そういうこと」
「事件のせいで休講になっている今が調べるチャンスよ、私は今晩、化学準備室を探る」
「私も行く」
真澄ちゃんが、間髪入れずにそう言った。
「馬鹿、あんたは来なくていい」
「でも、校内なら私の方が詳しいよ。準備室がある特別棟は、監視カメラがあるの。私ならその位置わかるし」
「……あんた、なんでそんな情報知ってんのよ」
真澄ちゃんは視線を逸らして、気まずそうに笑う。
「その……夜間の見回りルートとか、カメラの死角とか生徒はみんな知ってるというか……みんな、夜な夜な彼氏に会いに行ったりしてるから」
「あー……そういうこと」
野薔薇ちゃんは呆れたようにため息を吐いた。
「真澄、危なくなったら即逃げる。それが条件よ」
「うん」
「は、さっき部屋まで送り届けた子を見張ってて」
「わかった」
散らばっていた点が、少しずつ線になりかけている。
けれど、その線の先に何があるのかは、まだ見えない。
不穏な予感だけを抱えたまま、私たちは夜を待つことになった。