第28章 「善意の逆理 Ⅰ**」
「そうね。とりあえず伊地知さんたちに連絡して、その退学した子の今の足取りを調べてもらいましょ」
野薔薇ちゃんがスマホを取り出しながら答える。
すると、真澄ちゃんが不安そうに口を開いた。
「あの……犯人が、細井先生ってことは考えられないかな?」
真澄ちゃんの言葉に、野薔薇ちゃんはスマホを操作する手を止めた。
「うーん。でも細井は、自分だけお咎めなしで学校に残ったんでしょ? どっちかというと、恨まれてる側じゃない?」
恨まれている。
本当にそうなのかな。
(もし、私だったら……)
先生を守るために、自分が消えることを選んだとしたら。
「……二人が本気だったなら、仕方のない選択だったのかもしれないよ」
気づいたら、そう口にしていた。
野薔薇ちゃんと真澄ちゃんが、私の言葉の意味を探るようにこちらを見る。
「私なら……好きな人に、迷惑かけたくないし」
もし彼女が、細井先生をかばって一人で学校を去ったのだとしたら。
先生の立場を守るために、すべてを諦めたのだとしたら。
細井先生が、彼女を追い詰めた生徒たちを深く憎んでいてもおかしくない。
あるいは、二人が共謀して復讐している可能性だってある。
私の言葉を聞いて、野薔薇ちゃんは考え込むように顎に手を当てた。
「……の言う通り、そっちの線も考えた方がよさそうね」