第28章 「善意の逆理 Ⅰ**」
「ご、ご丁寧なご挨拶、恐縮です……」
「い、いえ! こちらこそ!」
……どうしよう。
こういう時って、何を話せばいいんだろう。
失礼があったら大変だと思えば思うほど、何も浮かんでこない。
変な汗をかきながら頭をフル回転させていると、真澄ちゃんが口を開いた。
「あ、あの。さんの……ご趣味は?」
「えっ? あ、しゅ、趣味は……読書とか、でして」
落ち着かなくて、つい髪の端をいじってしまう。
「真澄さん……のご趣味は、何でしょうか」
「私は、お、お花を少々……」
「そうなんですね、素晴らしいです……」
ぎこちない笑顔で、互いにカクカクとお辞儀しあっていると。
「あんたら、見合いじゃないのよ。ったく、二人とも人見知りなんだから」
野薔薇ちゃんが、やれやれと頭を抱えた。
私と真澄ちゃんは思わず顔を見合わせる。
なんだか、急におかしくなって。
緊張が解けて、二人で小さく「えへへ」と笑い合った。
「あの……私のこと、名前で呼んでもらって大丈夫です。敬語もなしで」
「うん、わかった。じゃあ……ちゃん。私のことも、真澄って呼んでね」
「うん。よろしくね、真澄ちゃん」
少し照れくさいけれど、呼び方を変えただけで、ぐっと距離が縮まった気がする。
「あの、お部屋にお邪魔してごめんなさい」
「ううん、全然大丈夫だよ」
真澄ちゃんはぎゅっと両手を握り合わせた。
「……実は、私の相部屋の子が……さっき食堂で亡くなった子なの」
「え……っ」
「今、警察の人がたくさん来てて。荷物とか色々調べてるから、今は部屋に入れなくて……」
「そうだったんだ……」
同じ部屋で過ごしていた子が、突然あんな形で亡くなった。
それだけでも怖いはずなのに、部屋に戻ることもできないなんて。
気の利いたことを言いたいけど、うまい言葉が見つからない。
私が黙っていると、横から野薔薇ちゃんが口を開いた。
「それで待機がてら今、真澄に色々聞いてたのよ。どうやら、今回の被害者の子たち……みんな同じグループだったらしいわ」
「……同じグループ?」