第28章 「善意の逆理 Ⅰ**」
自室に戻る廊下を歩きながら、さっきの女の子の言葉が頭の中をぐるぐると回っていた。
『あの子に……殺される』
あの子って、誰のことだろう。
亡くなった被害者たちと……何か関係してるってことなのかな。
それにしても、どうしてあそこまで怯えて――。
考え込みながら、自分の部屋の前まで来た時だった。
(……あれ?)
ドアの向こうから、微かに話し声が聞こえる。
野薔薇ちゃんの声ともう一人。
聞き覚えのない女の子の声が混ざっている。
(誰だろう……?)
今は、みんな自室待機になっているはずなのに。
どうしよう。
入っていいのかな。
扉を細く開けて、中を覗き込んだ。
「ただいまぁ……」
「あ、」
野薔薇ちゃんが、ベッドに腰掛けたままこちらを振り返る。
そして、その隣に見知らぬ女の子が座っていた。
肩まで伸びた髪。
どこか大人びた、落ち着いた雰囲気の子だ。
少しタレ目で、目元のほくろが可愛らしい。
(えっと……)
誰だろう。
野薔薇ちゃんのクラスの子かな。
すると、その女の子が慌てて立ち上がった。
背筋を伸ばして、とても丁寧なお辞儀をする。
「初めまして。秋月真澄です。あ、野薔薇ちゃんとは小学校の頃からの友達で……えっと」
「あ……」
昨日の夜、野薔薇ちゃんが話していた。
『あんなクソ田舎の、数少ない知り合い』
野薔薇ちゃんの地元の親友だ。
(この子が、野薔薇ちゃんの大切な……!)
そう気づいた瞬間、なんだか急にとんでもなくすごい人に出会ったような気がして。
身体がピーンと強張ってしまった。
「は、初めまして! と申します!」
私も勢いよく頭を下げると、真澄ちゃんもさらに居住まいを正した。