第28章 「善意の逆理 Ⅰ**」
私はベッドのそばにしゃがみ込んで、丸くなっている彼女の背中にそっと声をかけた。
「……えと、何か温かいものでも飲む?」
女の子の震えは止まらない。
顔は、血の気が引いて真っ青だった。
あの食堂の惨劇。
ショックで泣き叫ぶのも無理もない。
私だって、あんなものを見るのは初めてだった。
人の身体から、花が咲く瞬間なんて。
「……次は」
突然、女の子が口を開いた。
「次は、私だわ……っ」
「……え?」
次は……って。
他の被害者と、何か関係があるの?
「どういうこと? 何か知ってるの?」
「呪いだわ……っ」
女の子は両手で頭を抱え込み、泣き叫び出した。
「ごめんなさい、ごめんなさいっ!!」
何をこんなに怖がっているの?
「ねえ、お願い。何か知ってるなら私に教えて……っ」
もう一度声をかけると、ガシッと右腕を掴まれた。
爪が食い込むくらい、強い力。
「助けて……っ……あの子に……殺される……」
「あの子……?」
聞き返す前に、女の子はまた震えながら泣き出してしまった。
(……殺されるってどういう意味?)
背後でガチャリとドアが開く音がして、寮母さんと保健の先生が入ってくる。
「ここからは私が処置をしますから、あなたは部屋から出なさい」
「……え、あ……でも」
女の子の手が、保健の先生によって私の腕から強引に引き剥がされる。
「ほら、早く行きなさい。あなたも、部屋で待機よ」
寮母さんに急かされて、これ以上居座る理由は見つからなかった。
「……はい……失礼します」
渋々立ち上がり、小さく頭を下げた。
ドアを出る直前、もう一度だけ振り返る。
女の子はシーツに顔を埋めたまま、まだ震えて嗚咽をこぼしていた。
『助けて……っ』
さっきの彼女の声が、耳に残って離れなかった。