第28章 「善意の逆理 Ⅰ**」
「ちょっと、退きなさい!!」
人垣を弾き飛ばすようにして、野薔薇ちゃんが飛び込んできた。
「野薔薇ちゃん……っ!」
野薔薇ちゃんは倒れている女の子の惨状を見ると、大きく舌打ちをした。
そして、パニックになって悲鳴を上げている周りの生徒たちをギロリと睨みつける。
「あんたたち、さっさとここから離れなさい! 巻き込まれたいの!?」
その気迫に押されて、生徒たちが我に返ったように動き出した。
悲鳴を上げながら、食堂の出口へと殺到していく。
女の子の身体からは、もう何本もの白い花が咲き乱れていた。
つい数分前まで、私たちと同じようにここでお昼を食べて、笑っていたはずなのに。
「……くっそ」
ギリッと、野薔薇ちゃんが奥歯を噛み締める音が聞こえた。
(これが……『Re:bloom』の正体……)
あのサイトに書かれていた言葉が、頭の中に蘇る。
『終わらない苦しみを、還したい方へ』
これの、どこが……っ。
こんな死に方の、どこが苦しみを還すっていうの。
花冠の魔導と同じ、真っ白な花。
それが悔しくて。
気持ち悪くて。
大切なものを、汚されたみたいで。
私は震える両手を強く、強く握りしめた。
♢
警察と高専の関係者が到着するまで、そう時間はかからなかった。
食堂にはすぐに黄色い規制線が張られて。
さっきまで生徒たちの声で満ちていた場所が、あっという間に事件現場へと変わっていく。
そしてまた、あのブルーシートが、女の子の身体を覆い隠した。
(……また、助けられなかった)
すぐそこにいたのに。
手を伸ばせる距離にいたのに。
何もできなかった自分が、ひどく情けない。
私が、もっと早く気づいていたら。
私が、もたもたしていなければ。
そんな考えが、何度も頭の中をぐるぐる回る。
野薔薇ちゃんを見ると。
彼女もまた、やりきれないような顔でじっとブルーシートを睨みつけていた。
呪術絡みの事件として、遺体は警察の手から高専へと引き取られていく。
私たちは、女の子の遺体をのせたストレッチャーが運ばれていくのを、ただ黙って見届けた。