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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第28章 「善意の逆理 Ⅰ**」


ふと、食堂のテーブルに飾られた小さな一輪挿しの花が目に入った。


(……あれ? さっきまで咲いてなかったよね)


いくつかは、まだ固い蕾のままだったはずだ。
それが今は色鮮やかに咲き誇っている。
それに、さっきまで咲いていたはずの花が、茶色く萎れていた。


咲いた花と、枯れた花。
同じ一輪挿しの中で、不自然に混ざっている。


ぞわりと、嫌な予感が背中を這い上がる。



「……術式ね」

「え……?」



野薔薇ちゃんも、その花を険しい顔で見据えていた。



「術式って……どんな?」



私が聞き返すと、野薔薇ちゃんは忌々しそうに短く息を吐いた。



「そこまではわからないわよ。花を咲かせる術式なんじゃない?」

「でも、これで確定したわ。……誰かが故意にあの子を殺したってことよ」



その言葉に、心臓がドクンと嫌な音を立てた。
誰かがはっきりとした悪意を持って、あの女の子を……。



「行くわよ、」



そう言って、野薔薇ちゃんが食堂を出ようとする。



「でも……もう少し、調べた方がいいんじゃ……」


思わず、その背中に声をかけた。


まだ、何か残っているかもしれない。
見落としている手がかりが、どこかにあるかもしれない。
そう思うと、このまま離れるのは惜しかった。


野薔薇ちゃんが周囲の先生や警察関係者の方へちらりと視線を向けた。



「ここで余計なことして、怪しまれるわけにもいかないでしょ。一旦引くわよ。ここは、補助監督に任せましょ」

「……うん、わかった」



私たちも他の生徒たちと同じように、食堂を後にした。







当然のことだけれど、今日と明日は休講になった。
生徒たちは全員、調査が終わるまで寮の部屋で待機するようにと、厳しい指示が出されている。


重い足取りで、私と野薔薇ちゃんは女子寮へと戻ってきた。


足元がふわふわしていた。
ちゃんと歩いているはずなのに、自分の身体じゃないみたいだった。
さっき見た白い花びらが、まだ瞼の裏に焼きついている。


ドアを開けると、エントランスホールから甲高い声が耳に飛び込んできた。



「離してよっ! 私、今すぐここから出なきゃいけないの!」



声のする方を見ると、一人の女子生徒が泣き叫びながら暴れていた。
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