第28章 「善意の逆理 Ⅰ**」
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翌日。
午前中の授業が終わるのを告げるチャイムが鳴った。
(……よし、お昼休みだ)
野薔薇ちゃんに言われた通り、今日こそクラスの子たちから被害者の子の情報を聞き出さなきゃいけない。
気合を入れて立ち上がり、私もみんなの後を追って食堂へと向かった。
広い食堂に着いて、トレイにお昼のセットを乗せる。
それから、ぐるりと周囲を見渡した。
(……えっと、誰に声をかけよう)
クラスの子たちは、すでにいくつかのグループに分かれて食事を始めている。
転校してきてまだ数日。
特定のグループに入っていない私は、完全に浮いていた。
(こういうの、本当に苦手……)
でも、もたもたしている時間はない。
ぎゅっとトレイを握りしめて、三人組のテーブルに近づいた。
「あの……ここ、一緒に座ってもいいかな?」
三人の楽しげな会話が止まって、視線が一斉にこちらへ向けられる。
転校生がいきなり話しかけてきたことを、訝しげに見定めているような目。
(……ひぃっ)
逃げ出したくなるのを必死にこらえていると。
巻き髪の女の子が、ふっと表情を緩めた。
「ええ、もちろん。空いてるわよ」
「さんよね? どうぞ、座って」
その隣の子も、にっこりと笑顔を向けてくれる。
「あ……ありがとう」
ほっと息を吐いて、空いていた椅子に腰を下ろした。
すると、 向かいの巻き髪の女の子が、上品な手つきでフォークを持ちながら話しかけてきた。
「さん、学校にはもう慣れました?」
「あ、はい……おかげさまで」
「そう、よかったわ」
「…………」
会話が続かない……
どうしよう。
何か話題を振らなきゃ。
でも、お嬢様学校の子たちが普段どんな話をしてるのかなんて、さっぱりわからない。
カチャ、カチャと、食器の触れ合う上品な音だけが響く。
えっと。
天気の話?
いや、今さら「いいお天気ですね」も変かも。
じゃあ、好きな紅茶とか?
この学校の子たちなら、そういう話題の方が自然なのかな。
でも、紅茶の種類なんてアールグレイとダージリンくらいしか知らない。
お茶会。
華道。
バイオリン。
乗馬……?
だめだ。
話したくてもやったことがない……!