第28章 「善意の逆理 Ⅰ**」
いや、待て。
まだ、決めつけるのは早い。
みんなの知らないところで、何か深く思い詰めてたってこともあるだろうし。
とにかく、もう少し探ってみないと。
「……ねえ。野薔薇ちゃんは、どう思う?」
ふいに名前を呼ばれて、ハッと顔を上げる。
真澄が不安そうに、私を覗き込んでいた。
やばい、聞いてなかった。
「学校も詳しくは教えてくれないから、変な噂ばかりで……。野薔薇ちゃんも、やっぱり怖いよね?」
「え、あ……そうね。急な話で、ちょっとびっくりしちゃって」
笑って誤魔化した、その時だった。
ブルッ。
制服のポケットの中で、スマホが短く震えた。
「あ、ごめん。ちょっと待って」
真澄に断ってから、スマホを取り出す。
画面に表示されたメッセージの送信者は、だった。
『野薔薇ちゃん、今から会える? こっちで少し、わかったことがあるんだけど』
真澄にはもう少し聞きたいことがあるけど。
流石に、これ以上一気に聞き出すのは怪しまれる。
先生が言ってた倒れた生徒の件は……また今度探りを入れるか。
私はスマホをポケットにしまって、真澄に向き直った。
「私、そろそろ行かないと」
「うん、わかった」
真澄は少し名残惜しそうに頷いた。
その顔を見ると、もう少し話していたい気持ちが揺れる。
でも、今は任務中だ。
が何か掴んだなら、早く合流しないといけない。
「今日はありがとう。また明日ね。今度、買い物でも行きましょ」
私が軽く手を振ると、真澄はパッと顔を明るくして「うんっ」と頷いた。
懐かしさを振り切るように背を向けて、私はが待つ場所へと足を速めた。