第28章 「善意の逆理 Ⅰ**」
しまった。
いきなり踏み込みすぎたかもしれない。
「……て、転校してきたばっかでしょ? ほら、この学校でうまくやるためにも……触れちゃいけない話題とか知っておいた方がいいと思ってね」
なるべく何でもないふうに言ってみせる。
……ちょっと無理あったかしら。
真澄はしばらく迷うように目を伏せていたけれど、やがて小さく頷いた。
「そうだね。知っておいた方がいいかも。みんな、触れないようにしてるし」
「なんか、事件に巻き込まれたって聞いてる。確か、一年C組の子で……」
一年、C組か。のクラスね。
何か情報をつかんでるかもしれない。
「その子、どんな子だったの?」
私が尋ねると、真澄は「うーん」と少し考え込むように首を傾げた。
「私はあんまり付き合いがなかったから、よくわからないけど……」
「成績もずっと上位だったし、友達も多そうだったよ。お家もお父さんが有名な大企業の重役だって、聞いたことがあるし」
聞いた限りだと、学校生活や家に深刻な問題を抱えているようには見えない。
むしろ、誰もが羨むような完璧なお嬢様だ。
(てなると……自分であの『Re:bloom』の種を購入したとは、考えにくいわね)
苦しみや悲しみを取り除きたいと願うほどの絶望を抱えていたとは思えない。
あんな胡散臭い裏サイトにすがる理由が、見当たらない。
(じゃあ、どうしてあの子の身体から花が咲いたのよ)
自分から望んで種を手にしたわけじゃないなら。
別の可能性を考えるしかない。
(……誰かが意図的に、あの子の体へ『種』を仕込んだ?)
飲み物か何かに混ぜて、気づかないうちに飲ませたとか。
誰かの悪意を想像して、背筋がすっと冷たくなる。