第28章 「善意の逆理 Ⅰ**」
「で? あんた、今はどのクラスなの?」
「一年B組。野薔薇ちゃんは?」
「一年A組。……まあ、転校してきたばっかだから、まだ全然慣れてないけど」
「そっか。この学校、いろいろ特殊だから」
廊下には放課後の薄い光が差し込んでいて、床に二人分の影が並んで伸びている。
昔も、こんなふうに並んで歩いたわね。
あの村の、田んぼしかない退屈な通学路。
真澄とふみと三人で、よく一緒に帰ったっけ。
ランドセルを揺らしながら、くだらない話をして。
途中で寄り道して、おやつを買って。
大人から見たら何でもないようなことを、私たちは毎日飽きもせず笑っていた。
けれど今、隣を歩く真澄はあの頃よりずっと大人っぽい。
背も伸びて、言葉遣いもこの学校に馴染んでいる。
さっきまで見ていたお嬢様たちの中にいても、浮いていなかった。
そりゃそうか。
あれから何年経ってるって話よね。
「私、中等部からずっとここにいるから。だから、わからないことがあったらなんでも聞いてね」
「ありがと、助かるわ」
そう返しながら、ふと我に返った。
……そうだ。
懐かしい再会に浮かれている場合じゃない。
も今頃、別のクラスで一人で必死に探っているのに。
『Re:bloom』に関する手がかりを早く見つけないと。
真澄なら。
中等部からここにいる真澄なら、何か知っているかもしれない。
でも、なんだか言い出しづらい。
せっかく再会できたのに、いきなり人が死んだ話なんて。
それに、利用するみたいで申し訳ない。
いや、でも……これ以上の犠牲者を出さないためだ。
(ごめん、真澄)
心の中でこっそり謝って、声のトーンを落とした。
「ねえ、真澄。……なら、甘えついでに一つ聞いてもいい?」
「うん、なあに? なんでも聞いて」
「ここに来る前に、ちょっと変な噂を聞いたのよね。……この学校の生徒が、最近亡くなったって」
真澄の表情が、すっと強張った。
「……野薔薇ちゃん、なんでそんなこと知りたいの?」