第24章 「可惜夜に眠る 後編②**」
「……僕は、冗談じゃなくてもいいんだけど」
「えっ……」
思わず息を呑んで、先生の顔を見返した。
(そ、それって……)
いつもの冗談だよね。
からかってるだけだよね。
でも、私を見るその蒼い瞳は、少しも笑っていなかった。
私が固まっていると、先生はふっと視線を外して、お盆の上に並んだ大福に手を伸ばした。
「おばあちゃん。それより、この大福美味しそうだねぇ」
「さすが先生、お目が高い。駅前の和菓子屋さんの豆大福なんだけど、私のおすすめなのよ」
先生は「いただきまーす」と早速大福を一口頬張った。
「んー! なにこれ、めっちゃ美味しい!」
「でしょ? お豆がホクホクしてて、甘さもちょうどいいのよ」
「ほら、も食べなよ。僕が全部食べちゃうよ?」
「た、食べますよ……!」
慌てて大福に手を伸ばした、その時。
おばあちゃんがお茶を一口すすってから、ふと思いついたように顔を上げた。
「先生。の小さい頃のアルバム、見ます?」
「えっ」
「見る! 超見たい!」
私と先生の声が、見事に重なった。
先生は食べていた大福を飲み込んで、前のめりになっている。
「やだっ、おばあちゃん! 恥ずかしいからやめてよ!」
「いいじゃないの。減るもんじゃないんだし」
私の制止も聞かず、おばあちゃんはよっこいしょと立ち上がり、仏壇の横にある押し入れを開けた。
そして、奥の方から分厚いアルバムを抱えて戻ってくる。
「ほら、これこれ」
先生は嬉々としてアルバムを受け取り、表紙を開いた。
「うわ、ちっちゃ! なにこの顔、まんまるじゃん。お団子みたい」
最初のページの写真を見た途端、先生が吹き出した。
指差しているのは、たぶん三歳くらいの私。
ほっぺたがぱんぱんで、泥だらけの手で得意げにカブトムシを掴んでいる写真だった。
「野生児の片鱗がすでにここにあるね。気仙沼のアメフラシハンターは、ここから始まったのか」
「もうっ! あのことは忘れてくださいよ!」
私がむっとしても、先生は笑いながらどんどんページをめくっていく。